こどもの病気
6) インフルエンザ
1.はじめに
インフルエンザはかかったことがある人も多く、みなさんもよくご存知の病気だと思いますが、解説してみます。
インフルエンザは毎年12月上旬から3月にかけて(1月末から2月上旬がピーク)爆発的に流行し、総人口の5〜15%の人が罹患すると言われています。感染経路は空気感染または飛沫感染および接触感染であり、潜伏期は通常1〜4日(平均2日)で感染可能期間は発症前1日から発症後7日です。
症状は突然の高熱、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、倦怠感で始まり、鼻汁、咳嗽などの呼吸器症状を伴います。嘔吐や腹痛などの消化器症状を認めることもあります。抗インフルエンザ薬などで治療します。合併症としては、仮性クループ、気管支炎、肺炎、熱性けいれん(インフルエンザの5.5%)、中耳炎などが多く見られ、まれに急性脳症(インフルエンザ脳症、小児1万人に数人)、さらにまれに心筋炎の報告もあります。
出席停止期間は2012年4月に「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」とされています。
毎年流行しますが、予防が大切です。一般的な予防方法として、以下のようなことが言われています。
インフルエンザワクチン
マスクの着用:飛沫感染する距離は90cm
十分な手洗い
換気
保温・保湿(70〜80%)
バランス良い栄養
十分な睡眠
2.インフルエンザワクチンについて
日々の診療中に『インフルエンザワクチンは受けたいが、いつ打つのが一番効果的なのですか?』という質問をよく受けます。
2回接種した成績では、接種1~2週間後に抗体が上昇し始め、2回目の接種1か月後までにはピークに達し、3~4か月後には徐々に低下傾向を示します。したがって、ワクチンの効果が期待できるのは接種後2週から3~5か月までとされています。一般的には、効果的な接種時期は、流行期が通常12月から翌3月頃であるから、これに備えて12月までには接種が終了するような接種計画を組むことが重要といわれています。
3.当院での過去11年間のインフルエンザ流行状況
H16-17(2004-2005)年からH26-27(2014-2015)年の11シーズンにおける当院のインフルエンザ患者さん(迅速キットで陽性者のみ)を週別に検討しました。それぞれの年の流行状況を図示します。
H16-17(2004-2005)年は流行開始時期は遅く、A、Bともに2月から始まりそれぞれ2月末、3月初旬をピークに4月には終了しました。5月にA型の散発がみられました。全体として中規模の流行でした(図1)。
H17-18(2005-2006)年は流行開始時期は早く、12月からA型の流行が始まり2月初旬にピークとなり、3月末で流行は終了しました。B型は4月末から小さな流行が始まり、6月初旬で終了しましたが、少数でした。全体としては中規模の流行でした(図2)。
H18-19(2006-2007)年は1月中旬ころからA型、2月終わりころからB型が流行しはじめ、6月まで続きましたが、全体としは小規模な流行でした(図3)。
H19-20(2007−2008)年は12月の最初かからA型の流行がみられ2月初旬にピークを向かえ、4月には終息しました。B型は2月終わり頃から流行し4月末で終了しました。全体としては大きな流行ではありませんでした(図4)。
H20-21(2008-2009)年は12月末からA型、1月初旬からB型の流行が始まりともに4月頃まで続き、非常に大きな流行となりました(図5)。
H21-22(2009-2010)年は記憶に残る年となりました。世界中がパニックに陥ったいわゆる新型インフルエンザ(現在はH1N1pdm)の登場の年でした。この年5月に国内初の患者さんが神戸市で確認され、日本中に厳戒態勢がひかれました。当院では8月7日、10か月の男児が最初の症例でした。その後、流行には至りませんでしたが、西条まつりの後から大流行し、2月の中頃に終息しました。この年はB型は1例もみられませんでした(図6)。
H22-23(2010-2011)年はA型は12月末から流行し始め2月初旬と、4月末とに2峰性のピークがありました。前半のピークは前年からのいわゆる新型(H1N1pdm)、後半のピークは主にA香港型(A3N2)でした(当院HP感染症情報(2)参照)。B型は3月〜4月に小さな流行が見られました。全体的には中規模の流行でした(図7)。
H23-24(2011-2012)年はA型は12月末から、B型は1月初旬から流行が始まりA型は1月後半と2月中頃の2峰性、B型は2月中頃をピークに大きな流行が見られました。全体としても大きな流行となりました(図8)。
H24-25(2012-2013)年は12月中旬から始まり1月中頃にピークを向かえ、3月中頃にはほぼ終息しました。B型は1月中頃に少しみられましたが小さな流行でした。全体としては中規模の流行でした(図9)。
H25-26(2013-2014)年は12月末からA型、1月初旬からB型が流行し始め、それぞれ2月中頃、2月後半にピークを向かえゆっくりと減少して5月後半までみられました。全体としては中規模の流行でした(図10)。
H26-27(2014-2015)年では12月中旬から流行が始まり、1月中から後半にピークを向かえ、3月にはほぼ終息しました。全体として中規模の流行でした(図11)。
11シーズンの流行状況を年別、A型、B型別に検討しました。流行の規模は年ごとに異なっていました。A型は毎年流行し、B型は一般的には隔年に流行すると言われていますが、当院の検討では2〜4年毎の流行が見られました(図12)。
当地区でのインフルエンザの流行時期をわかりやすくするために、いわゆる新型のみの流行であったH21-22(2009-2010)年を除く10年間の症例数を月ごとに合計しました。2月が最も多く、続いて1月、3月、4月、12月、5月となっていました(図13)。当地区ではインフルエンザの流行は全国状況と比べてやや後ろにずれる(12月より4月が多い)傾向が見られました。
ワクチン接種は1回接種の方は流行の1か月前、2回接種の方は2か月前から接種する必要があり、少なくとも12月中頃までには接種を終了する事が重要と思われました。また、罹患していなければ1月に接種も可能であり、流行期に入り接種する場合は、急いで1回接種し、間に合えば2週後に2回目を接種する方法も良いと思われました。なお、3月に受験を迎える受験生では2月の接種も効果的と思われました。
近年、インフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いており、 WHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨しています。また、米国においては2013/14 シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきています。このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討 し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB /ビクトリア系統の4価ワクチンとなりました(今まではB型1種類の3価ワクチン)。そのためにワクチン本体の価格が上がり、接種料金も値上げせざるを得なくなりました。特に2回接種では費用も大変だと思いますが、是非接種することをお勧めいたします。
4.当院でのH27-28年シーズンのインフルエンザについて
はじめに
前回、11年間のインフルエンザについてまとめて報告しました。今回はH27-28年シーズンのインフルエンザ症例において、年齢別罹患者数やワクチンの効果ついて報告します。
対象と方法
H27年11月7日からH28年5月9日までにインフルエンザを疑い迅速検査を施行した延べ1430例を対象にしました。
方法は罹患症例を週別、年齢別に集計しました。また、全症例のインフルエンザワクチンの接種歴を調べ、A型罹患例、B型罹患例および陰性例のワクチン接種率を比較しました。
結果
H27-28(2015-2016)年シーズンの流行の始まりは遅く、当院での初めての症例はH28年1月6日のA型でした。以後、A型を中心に徐々に増加し、2月中頃からはB型の流行が始まりました。3月初めには大きなピークを迎え徐々に減少してきました(図1)。
年齢別では5-9歳が最も多く、続いて0-4歳、10-14歳、15歳以上でしたが、当院が小児科であるためのバイアスを考慮する必要があると思われます(図2)。
ワクチン接種については、検査した1430例中ワクチン接種していた人は629例(44.0%)でした。また、629例中452例は当院で、170例は他院で接種していました(図3)。
インフルエンザ罹患とワクチン接種との関係では、A型罹患者、B型罹患者ともに、罹患しなかった人たちよりもワクチン接種率は低かった(図4)。
まとめ
今シーズンはインフルエンザの流行開始時期は遅かったが、全体としてはB型を中心に大きな流行となりました。ワクチンはA型、B型ともに有効だったと考えられました。
5.当院でのH28-29年シーズンのインフルエンザについて
はじめに
H28-29年シーズンのインフルエンザ症例において、週別患者数、年齢別罹患者数について報告します。また、迅速診断キットについて検討した結果を報告します。
対象と方法
H28年10月31日からH29年4月10日までにインフルエンザを疑い迅速検査を施行した延べ1132例を対象にしました。
罹患症例を週別、年齢別に集計しました。迅速診断キットはT社、A社、O社のキットを用いました。各キットで陽性判定までの時間を測定しました。また、発熱から6時間以内に来院された患者さんで、同意を得られた症例に対して、銀増幅法および従来法(T社、A社、O社のいずれか)一つを選び、同時に2つの方法での検査を行い、それぞれ陽性までの時間を測定しました。
結果
H28-29(2016-2017)年シーズンの流行は早く始まり、当院での初めての症例はH28年11月16日のA型でした。以後、徐々に増加し、1月末から2月初めにかけてピークを迎え徐々に減少してきました。B型はほとんど流行しませんでした。B型の流行がなかったためか、全体としては中規模の流行でした。(図1)。
年齢別では5-9歳が最も多く、続いて0-4歳、10-14歳、15歳以上で咋シーズンと同じ傾向でした。当院が小児科であるためのバイアスを考慮する必要があると思われます(図2)。
迅速診断キットの比較をしました。判定までの時間はO社のキットが最も早く以下A社、T社の順でした。(図3)。統計学上はこの表し方は正しくはありませんが、わかりやすくするために平均+標準偏差のグラフで示しました。
銀増幅法との比較では、結果の一致率はT社、A社では100%、O社では95%でした。3つの迅速診断キットともに銀増幅法よりも優位に短時間に診断可能でした。(図4、図5、図6)
まとめ
今シーズンはインフルエンザの流行開始時期は早かったのですが、全体としてはB型がほとんど流行せず、中規模の流行となりました。
迅速診断キットはいずれも有用であり、慣れたキットを使いこなすことが重要であると思われました。
発症早期では通常の診断キットの陽性率は低く、銀増幅法が有用であるとされています。銀増殖法とは従来法に加え、標識抗体に写真の現像技術を用い、大きな銀粒子を付けて高感度にしたものです。今回の検討では発症6時間以内の発症早期症例でも従来法と銀増幅法の結果は一致しており、反応時間およびコスト面から従来法での判定で十分であることがわかりました。しかし、今回はA型のみでの検討であるため、B型の流行の際には異なる結果となる可能性もあると思われました。
6.当院でのH29-30年シーズンのインフルエンザについて
はじめに
H29-30年シーズンのインフルエンザ症例において、週別患者数および今シーズンから改良された迅速診断キットについて陽性判定時間を検討しましたので報告します。
対象と方法
H29年11月10日からH30年4月10日までに発熱などの症状で当院を受診し、インフルエンザを疑われ迅速検査を施行した延べ1990例を対象にしました。
罹患症例を週別に集計しました。迅速診断キットはクイックナビFlu2、アルソニック、イムノエースを用いました。各キットで陽性判定までの時間を測定しました。クイックナビFlu2とイムノエースは今シーズンから5分の判定キットに改良されています。
結果
検査数は述べ1990例で、A型罹患は376例、B型罹患は603例でした。複数回罹患症例についてはA型とB 型に罹患した症例は64例(うち2例は同時罹患)でした。 A型に2回罹患した症例は2例、 B型に2回罹患した症例は1例、 A型2回とB型にも 罹患した症例は1例(4月13日にも1例)でした(図1)。
H29-30(2017-2018)年シーズンの流行は早く始まり、当院での初めての症例はH29年11月10日でA型でした。A型は1月中旬頃にピークを向かえ、以後漸減しました。B型は年明けから始まり、急激に増加し2月最初にピークを向かえ、漸減しました。抜き打ち的に調べた分離ウイルスはA型では前半はA(H1N1pdm)、後半はA(H3N2)でした。B型では前半は山形系統で後半はビクトリア系統でした(図2)。
3つの迅速キットについてA型インフルエンザの陽性判定時間ヒストグラムを示します。横軸は陽性判定時間を30秒ごとに示し、縦軸は陽性判定された症例の累積%です。3つともほぼ同様カーブを示しますが、クイックナビFlu2、アルソニック、イムノエースの順に判定時間が短い傾向が認められました(図3)。
B型での結果を示します。クイックナビFlu2の判定時間が短く、アルソニックとイムノエースはほぼ同様の結果でした(図4)。(イムノエースは240例でしたが、1例は測定ミスのためn=239となっています)また、3つの迅速キットともにA型の方がB型よりも判定時間が短い時間傾向がありました。
まとめ
今シーズンはA型で始まり、B型の大きなピークがあり、全体としては大きな流行となりました。ウイルス検査は抜き打ち的ではありますが、A型では始まり頃はA(H1N1pdm)、終わり頃はA(H3N2)、B型ではピーク頃は山形系統、終わる頃はビクトリア系統で4つのウイルスの流行がありました。
迅速診断キットはいずれも有用でしたが、それぞれ若干の判定時間の差もあり、特性を知り慣れたキットを使いこなすことが重要であると思われました。
7.当院でのH30-31年シーズンのインフルエンザについて
はじめに
発熱後すぐ受診される方や、園や学校から「早く受診して検査してもらってきてください」と言われ、発症早期に受診される方が多く見られます。一番良い検査のタイミングを見つけるために、H30-31(2018-2019)年シーズンのインフルエンザ症例において発熱(37.5℃としました)から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を検討しました。また、H29-30年とH30-31年の両シーズンにおいて1回目の検査で陰性判定され、3日以内の再検査で陽性判定された症例において迅速キットの限界時間の検討をしました。
対象と方法
H30年12月10日から4月6日までに発熱などでインフルエンザを疑い、迅速検査を施行した885症例を対象にしました。迅速キットはイムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2を用いました。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例はH29-30年およびH30-31年シーズンでイムノエースではA型で9例、B型で14例、アルソニックではA型で8例、B型で4例およびクイックナビFlu2ではA型で2例、B型で13例でした。
結果
検査数は述べ885例で、A型罹患は319例、A型2回罹患が1例で、B型は認められませんでした(図1)。
H30-31年(2018-2019)年シーズンは12月中頃から始まり、1月中頃から2月初めにピークを向かえました。抜き打ち的に調べた分離ウイルスはA(H3N2)が多いようでした(図2)。
37.5℃以上の発熱から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を示します。縦軸は陽性判定された時間の平均値、横軸は発熱から検査までの時間を示しています(図3)。イムノエースとクイックナビでは0~5時間に比べて6~23時間では、判定時間が短い傾向がありましたが、統計学的には有意ではありませんでした。アルソニックでは、48~71時間と遅く検査された場合は陽性判定時間が長くなる傾向はありましたが、発症からの時間と判定時間には大きな差は認められませんでした。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例を示します(図4)。縦軸は1回目の検査時の発熱からの経過時間を示しています。イムノエースB(イムノエースで診断されたインフルエンザB型)では14例中3例が発熱から検査までの時間不明、アルソニックA(アルソニックで診断されたインフルエンザA型)で6例中1例が時間不明でした。3キットともにB型では時間が長くても陰性と判定される(偽陰性)傾向は認められましたが、有意差はありませんでした。
暫定的に約7時間で区切ると(赤い点線)、これより長い時間で偽陰性となった症例はA型では2例のみ、約16時間で区切ると(青い点線)、これより長い時間で偽陰性になった症例はB型では1例のみでした。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例の一覧を示しています(表1)。A型ではクイックナビ、アルソニック、イムノエースの順で偽陰性率が低い傾向がありました。B型では3キットともにほぼ同じ偽陰性率であり、A型より偽陰性率が高い傾向がありました。
まとめ
今シーズンはA型のみの小さな流行でした。分離ウイルスでは抜き打ち的ではありますが、A(H2N3)が多く見られました。発熱からの時間と陽性判定時間との間には有意な関係は認められませんでしたが、B型の方が陽性判定されにくい傾向がみられました。
発熱から早期に検査しても陽性判定される症例もあり、ベストな検査時期を見つけることはできませんでした。症例ごとに、理学初見および流行状況等を参考に検査する必要があると思われました。
8.当院でのR1-2年シーズンのインフルエンザについて
はじめに
インフルエンザ診断において、一番良い迅速検査のタイミングを見つけるために、昨シーズンと同様に発熱(37.5℃)から検査までの時間と陽性判定時間との関係を検討しました。
また、H29-30(2017-2018)年シーズン、咋シーズン、および今シーズンのインフルエンザ患者さんで、初回の迅速検査で陰性判定され、3日以内の再検査で陽性判定された症例において発熱から初回検査までの時間を調べて各迅速検査キットの限界時間の検討をしました。
対象と方法
今シーズンはR1年10月29日からR2年3月24日までに発熱などで当院を受診し、インフルエンザを疑い、迅速検査を施行した1052症例を対象にしました。迅速検査キットはイムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2を用いました。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例はH29-30年、H30-31年およびR1-2年の3シーズン合計でイムノエースではA型13例、B型14例、アルソニックではA型13例、B型7例およびクイックナビFlu2ではA型6例、B型13例でした。
結果
今シーズンのインフルエンザはA型475例、B型50例で、12例がA型とB型に両方罹患し、1例がA型に2回罹患していました(図1)。
今シーズンは流行開始時期は早くA型はR1年10月末頃から始まり、12月末頃とR2年1月末頃に2峰性にピークを認め、R2年2月末には終息しました。抜き打ち的に調べた結果、分離されたウイルスは全例でA(H1N1pdm)でした(図2)。B型はR2年2月中頃から流行が始まり、3月初旬に小さなピークを認め3月末には終息しました。全体的には中程度の流行規模でした(図2)。
37.5℃以上の発熱から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を示します。縦軸は陽性判定された時間(秒)、横軸は発熱から検査までの時間を示しています。全例プロットしました。3キットともに発熱からの検査までの時間と陽性判定時間には有意な相関関係は認められませんでした(図3図4図5)。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例を示しています。A型については、初回検査は陰性で3日以内の再検査で陽性となった例は、イムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2それぞれ全陽性例に対して、3.3%、3.1%、1.6%でクイックナビがやや低い傾向でした。B型については、それぞれ5.8%、6.1%、4.4%であり、3キットともにA型よりB型の方が頻度が高い傾向が認められた(表1)。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例において、各キットごとにA型、B型別に、初回検査時の発熱からの経過時間を示しています。イムノエースとアルソニックではB型の方がA型よりも発熱から長い時間経過して検査しても陰性判定されていました(図6)。
3キットとも陰性一致率は95%以上なので、A型では約14時間(破線)、B型では約17時間(一点鎖線)経過すればほぼ正しく診断されると考えられた(図6)。
まとめ
1. 今シーズンのインフルエンザはAH1を中心とした中程度の流行規模であった。
2. 発熱(37.5℃)から検査までの時間と陽性判定時間との間には有意な相関関係は認められなかった。
3. 初回検査が陰性、3日以内の再検査で陽性となった症例の検討では、3キットともにA型よりB型で初回で陰性判定される症例が多かった。クイックナビが他のキットに比べて、A型、B型ともに初回で陰性判定される率は低い傾向があった。
4. イムノエースとアルソニックではB型がA型よりも長い時間経過して検査しても陰性となる傾向があった。当該症例から見積もった検査の限界時間はA型では約14時間、B型では約17時間と思われた。
発熱から早期に検査しても陽性判定される症例もあり、一番良い検査時期を見つけることはできませんでした。症例ごとに、理学初見および流行状況等を参考に検査する必要があると思われました。
新型コロナウイルス感染症の影響でまとめが遅くなりました。